録音めも。AKG C451B
以前にも手嶌葵さんの曲には何度か挑戦したのですが、あのふくよかなエアー感を纏って歌うこと、そしてそれをミックスで表現する事はかなり難しいのですが、新しいマイクを手に入れたので、メロディーを囁くようにウィスパーで歌ってもらい、サビの高域にサチュレーション効果を重ねたら違った感じで制作できるかも・・・といろいろお試ししてみました
裏声メインの曲を空気を含めつつ小声で歌うのは音程を維持するのがかなり難しかったみたいです。
マイクの感度を上げる分、ブレスも注意しないといけないので、手嶌葵さんの表現力はすごいなぁ・・・とつくづく思いました。
2023.4.10 追記
YouTubeで10万回再生されました♪
たくさん聴いていただきありがとうございます。
また、暖かいコメントを頂きとても嬉しいです。励みになります。
ウィスパー向けのマイク
使用したマイク
今回使用したマイクは、
AKG C451B(通称シゴイチ)です。
かなり古くからあるコンデンサーマイクで、ドラムのハイハットやアコギの音を拾うのによく使われるマイクですが、高域に山のある特性はハイトーンな女性ヴォーカルのウィスパーを録るのに合うかも知れない・・・と気になっていたマイクです。
マイクにはウィンドースクリーンが付属していますので、今回はそれを被せて使います。
今回はSENNHEISERのヴォーカル用コンデンサーマイクE965と比較してみました。
重量はe965が396グラムで結構重めなのに対し、シゴイチは125グラムとかなり軽いです。しかしその軽さと細さの影響かと思いますが手で持って歌う場合はマイクボディのタッチノイズに気をつけないと結構音入ります(今回の音源にもしっかり入っていました)
録音環境
アウトボード
録音は、マイク→マイクプリアンプ→真空管光学式コンプレッサー→オーディオインターフェイスと繋いでいます。
- マイクプリアンプ
GAP PRE73 mk3 (Carnhill Mod) - 真空管光学式コンプレッサー
WARM AUDIO WA-2A - オーディオインターフェイス
RME Babyface Pro FS
一番下のClarettは別のパソコン用で録音には使っておりません。
WARM AUDIO WA-2A
こちらは、Kenetek社のオプトセル(T4Bモジュール)と4本の真空管を使用している光学式コンプレッサーになります。
WARM AUDIO WA-2AはLA-2AというTeletronix社の有名な光学式コンプレッサーと同じスタイルの製品です。本家と比べると相当お安く入手できますが、使用部品や基盤にはかなり拘りがある製品で造りも良いので、76系のレプリカをお持ちの方にお勧めの拡張機材です。
ふわっと柔らかく掛かるので特に女性ヴォーカルにオススメです♪
電源について
海外の機材を国内で使用する際の電源については悩みます。
今回は、購入時にメーカーやサウンドハウスさんに色々と問い合わせを行いました。
Warm Audio社とサウンドハウスさんに色々とお話を伺った結果、100Vで使用して問題ないという回答を頂きました。
ただ、真空管のヒーター電圧までは測定していませんが、電源トランスの出力を調べる限り、100→120Vの昇圧トランスを使った方が良さそうと判断し、この機材に関しては自己責任で115Vで使用する事にしました。
現在販売されているWA-2Aはメーターキャリブレーションのつまみなどもリアからフロントに変更されていますので、電源も国内向け(100V専用)になっているかも知れませんので、同製品をご購入される際は販売店にご確認ください。
余談ですが、私は余程の事情(取り扱いされていない、代理店の技術力やサービスへのリスペクトなど)がない限り、音楽制作に使用する機材は極力サウンドハウスさんで購入するようにしています。購入前・購入後のサポートも丁寧で非常に好感が持てますし、新製品を中身のないレビューで販促しないスタンスにも好感を持っています。そして一番良いと感じる点は、注文履歴がきちんと残されている販売システムを構築し、長く運用されている点です。こちらは販社がユーザとメーカーとの間で製品の保証、保守を行う上で必要となる重要な証憑だと思います。押しつけではなく、ユーザが求めるものがすぐに見つかる工夫されたサイトで買い物をするのはとても楽しいです。
録ってみた
ヴォーカル編
二本のマイクをどちらも手持ちで録ってみました。
AKG C451Bから始まって0:56辺りからSENNHEISER E965に変わります。E965はスーパーカーディオイドモードに設定しています。
WaveLabのスペクトグラムの表示設定
本来はモノラルのアカペラ音源でエフェクト無しですがステレオミックスダウンしてしまったので音源はステレオになっています
スペクトグラムの周波数ごとの色付けは以下のように設定しています。FFT帯域幅の設定がヴォーカルとしては広すぎたのでわかりづらいですが、左上のスペクトロスコープと併せ、どの周波数帯の音が録れているかを感じていただければ・・・と思います。
録ってみた感想
個人的な感想は、C451Bの方は音質はかなり硬めですが解像度は高く、低域から高域まで綺麗に拾えていると思いました。特に高域のサラっとした感じは、プラグインで一皮被せた音作りをしたいときには使えるかな・・・と感じました。
E965は全体的にふくよかな感じでヴォーカル帯域の解像度は非常に高いです。こちらはEQで補正をしなくてもそのまま使える音だと感じました。
普通に使うなら間違いなくE965ですが、今回のように音に色を付ける前提ならシゴイチの録音は使えると思いました。
ただしウィスパーの低域を上手く録るためにマイクを口元に寄せて歌うのでブレスも容赦なく録音されます。
下手するとメロディーよりブレスの方が大きくなるので、全てのブレスについてゲイン調整をしています。
オケをミュートしてヴォーカルトラックのみを再生し、アカペラ音源のブレスを繰り返し聴き続け音量を調整する作業になりますので寝落ち率はかなり高いです。作業しながら途中で何度も寝てました・・・
E965は殆ど弄っていません。内蔵のウィンドースクリーンが上手く働く、非常に扱いやすいマイクです。
ミックス編
今回はサチュレーション効果を乗せるためにDTM業界では有名なブラックフライデーのセール(通称:黒金)で、うっかり買ってしまったプラグイン達を使って試行錯誤しました。
ヴォーカルトラックのプラグイン
まずはボーカルライダーでサイドチェーンに入れたオケに合わせ、歌声に少しだけメリハリをつけるようボリュームを描かせて、後は手で補正します。ほとんど描き直しになりますので、この作業も相当寝落ち率が高いです。
みかくまの歌声はファルセットがフワっとしてカツレツが悪く聴こえてしまうため、基本的にはドライ(歌声)トラックには空間系を掛けないのですが、今回は自然なチェンバー・リバーブを薄く掛けました。プラグインを前にやったり後ろにやったり色々入れ替えて、最終的には以下のような順番になりました。
INTENSITYはAIR成分を乗せるために使用しオートメーションで効き具合を変化させています。最期にアナログイコライザーで濁してるイメージでいますが、ユアリズムの作品は全て、その時に気になったプラグインを使って試行錯誤して一番良い!と自分の耳で感じた音をゴールとしておりますので商業音楽を作成するような手順は一切ありません。右脳直結で再現不可ということです(;^_^A
- waves Vocal Rider
- Cubase 10 proのパライコ「Frequency」
- RX7 De-ess
- waves Maserati VX1
- FabFilter Pro-Q3
- Zynaptiq INTENSITY
- waves PuigTec EQP-1A
- waves Abbey Road Chambers
- waves NLS
ヴォーカル用FXトラック(リバーブ)
waves Abbey Road Reverb Plates
ヴォーカル用FXトラック(ディレイ)
Cubase 10 proのディレイ
お気に入りプラグイン
FabFilter Pro-Q3は、オケを作るときや、ミックスをするときに他のトラックにも刺してトラック間の被りや、リバーブ、ディレイを掛けるヴォーカルの帯域を決めるのに使っていますが、視覚的にわかりやすくかなり重宝しています。以前はNeutronを使っていましたが、AI関連のプラグインはバージョンがあがるごとに作られる感が強くなってきたため今は使っていません。(Cubase Pro 10.5にも似た機能が追加されたと思いますが、まだ使ったことがありません・・・)
waves Maserati VX1はコンプレッサーとプリディレイがセットになっていて効果が見えやすいのでお気に入りです。(安いのも◎です)
パフォーマンス
動画の右上にリアルタイムモニターを表示しています。ミックス時のCubaseのパフォーマンス設定内容は以下のようにしています。
プラグインを刺しまくってお試しするときはASIO-Guardを有効にしています。これを切るとreal-time peak値が爆発的に上がって荒ぶり始めます
ヴォーカルの録音時はBabyfaceのリバーブのみ使用してCubaseからモニター返しはしていません。
そこまでレイテンシーを詰める必要がありませんので以下のような設定で録音しています。
完成
色々お試ししてなんとか完成しました
さよならの夏~コクリコ坂から~ (Cover Song♪)
うた:みかくま (MIC : AKG C451B)
音源:ふぉろん (Daw : Cubase Pro 10.5)
日中の仕事を終えた夜中に寝ぼけながら作業して寝落ちを繰り返し、最後は勢いにまかせてYouTubeにアップしてしまいましたので、色々とやらかしました。
高域だけじゃなく中~低域まで歪みが強くヴォーカルのピッチが悪く聴こえる
おまけにオケのオートメーション有効になっていませんでした。後半のベースも音痴すぎました
・・・と、どこまで弄っても所詮素人の手習い事。その時の感覚で作っている事もあり、完成とは言いづらいですが、最終版はこちらになります。
さいごに
色々な機材やプラグインを試しているうちにモニタースピーカーからの音で判別しにくくなってきたので、DIYでモニタースピーカーの背面などに吸音材を貼りました。カラフルなものが良かったのですが結構高かったので黒で。これは結構効きますね。(適当に貼っているだけなので、効果よりモチベーション的に・・・)
2022/04/26追記
さよならの夏~コクリコ坂から~ (Cover Song♪)
たくさん聴いていただきありがとうございます
作品はあまり増えていませんが、二年後の制作環境はかなり変わりました。
作業部屋(仕事部屋ですが)がかなり狭いためモニタースピーカーではキャリブレーションを頑張っても音が見えづらいです。
こういう環境ではやはりヘッドフォンが強いですね。
壁は元に戻してスッキリ。モニター用(録音、ミックス時は密閉型、マスタリング時は開放型)、リスニング用とヘッドフォンが沢山増えました。
RME BabyfaceにSPDIFでADI-2 PROを繋ぎ、ミックス・マスタリングをするときはADI-2 PROでモニターするようにしています。ADI-2 PROはバランス出力もできますし、ヘッドフォン毎の補正用EQを登録しておけるのがとても便利です。
次は寝落ちしないようがんばろう